大海令 大日本帝国海軍の軌跡


対応機種 PC-9801 VM/UV以降
FM-TOWNS
価格 9800円
発売年度 1988年
備考 HDD非対応


紹介
アートディンクの作品です。
太平洋戦争における日米海空戦を扱った戦術級シミュレーションゲームです。
プレイヤーは日本軍を受け持ち、日本を勝利に導くことを目的としています。


内容説明
今見ても斬新なアイデアに満ち満ちた作品です。
しかし惜しむらくは、ゲームになっていませんでした。
・・・全くフォローになってませんか(笑)


どの辺が斬新かと言いますと、ゲームの構成。
シナリオが大きく二つに分かれていて、真珠湾攻撃編と本土防衛戦編とがあります。
まず真珠湾マップをクリアし、その戦果によって本土防衛戦マップでの日本軍の使用可能戦力が増減するというシステムです。
このシステム自体は実に野心的であり、評価すべき点であると思います。
しかし、もう一つの斬新さが、このプラス評価を吹き飛ばし、それどころか致命傷にすらなっているのです。


全てをぶち壊した斬新なシステムとは、「リアルタイム処理
戦況は時々刻々と変化します。戦いは分単位・秒単位の決断がその勝敗を分けるものであるのは事実です。
事実なのですが、それをゲーム上で再現するために、大海令では距離感に大ナタを振るいすぎました。
その結果、史実では真珠湾の洋上遥か遠方から攻撃隊を発艦させた空母部隊、ゲームでは何とびっくり真珠湾湾口にまで行かないと発艦させられなくなってしまったのです。
「特殊潜航艇か、おどりゃーっ!」
と、大錯乱状態に陥ること間違いありません。
目の前に空母がのほほ〜んと浮いているのに、戦艦が指をくわえていなければならないいわれはありません。必然的に、虎の子の空母群が真珠湾在泊の戦艦に追い回されて砲撃されてしまうのです。
山本五十六や黒島亀人が聞いたら、卒倒確率120%でしょう。
第一、そんな危なっかしい戦闘しかできないのであれば、真珠湾空襲など考えるはずもありません。
それ以前に「航空主兵」という思想すら生まれなかったでしょう。
あまりの斬新さに、私はついていけませんでした。


もう一つ斬新だったのが、「暗号の存在
艦隊が補給が必要になったりすると、作戦の指揮官に対して補給要請を打電してきます。
もちろん、現実世界においては、戦闘海域におけるこの手の通信は暗号を使用します。
ところが、「大海令」でもこれを再現してしまったのです。
プレイヤーは、入電してくる各艦隊からの通信を、パッケージに添付されている暗号表を使って解読しなければならないのです!!
しかもリアルタイム処理の中!!
「ちゃぶ台返すぞ、だりゃあーっ!」
面倒くさくて、そんなことはやってられません。
はっきり言ってこちらの斬新性は、無い方がマシでした。
もっとも、こちらは不正コピー防止策だったと思われます。
ディスク媒体だけでなく、ペーパーを使用することによって、プログラムだけの地下流通を阻止するという。
狙いは当たったのでしょうが、達成した手段が当初の予想と異なっていたのではないでしょうか。
つまり、誰もコピーしたく・・・(T T)


評点
操作系 マウス主体です。
が、マウスカウントを上げないと非常にやりにくいです。
しかもユニット小さいし。
★★
グラフィック マップは全体的に暗い印象を受けます。
誉められませんが、けなす理由もないという出来ですか。
もっとも、リアルタイム制なので、呑気にグラフィックなど見ていられませんが。
艦艇図は線画を採用し、側面図の他、上面図も付加され、水線下の部分まで描かれています。
こちらの方は、そこそこの出来です。
★★★
音楽 オープニングにはBGMがあるのに、ゲーム中はありません。
486マシンならばウェイトをかけないと使えない代物なのですが、当時の環境だとBGM付にすると重過ぎたのでしょうか。
評定不能
オープニング ホルストのマルスをBGMに据え、映画タイトルを意識した演出で、重厚な作りになっています。
もちろん、モノクロ!
その甲斐あってか、センスの良さにかけては「」には届かないものの「提督の決断」と同程度の出来栄えと、結構見れるものになっています。
もう少しBGMが上質のものであれば、が一つ増えていたのですが。
★★★★
資料価値 ゲーム中、実測値が出ます。
ただ、現実世界では、戦時中の艦艇は戦況に応じて改装を重ねます。
それなのに、ゲーム中ではどの時点の艦の状態を再現したものなのかを明示していません。
また、全長として示される値が実際は水線長であったり、排水量が基準排水量でなく公試状態排水量であったりと、値の指すところが明確でないのが気にかかります。
一応、高雄型重巡でも、高雄・愛宕と、鳥海・摩耶の改装・非改装によるクラス分けを行っており、細かい気配りが見て取れるのですが、抜けているところも多々・・・。
努力は買いましょう。
★★★
難易度 とにかくシステムと制作方針に慣れないといけないので、それが最大のハードルでしょう。
私にとっては東京タワーよりも高いハードルでした。
★★★★★
総評 アートディンクのウォー・シミュレーションゲームは、野心的で、広告やパッケージを見る限りはかなり期待を持てるのですが、内容は・・・。

「大海令 大日本帝国海軍の軌跡」は、株式会社 アートディンクの著作物です。


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