提督の決断2


対応機種 PC-9801 VX/UV以降 MS-DOS
価格 14800円
発売年度 1993年
備考 HDD対応 RS232C通信対戦対応


紹介
光栄の提督シリーズ第2弾です。
太平洋戦争の全期間を扱った戦略級シミュレーションゲームです。
第一作同様、プレイヤーは日本海軍あるいはアメリカ海軍を受け持ち、相手国の艦隊の全滅、あるいは艦隊の母港になりうる都市を全て占領することを目的とします。


内容説明
一作目に比べてかなり改良されている一方で、改悪されている部分もあります。


まず改良点から。
例えば、一作目の欠点として挙げた航空機の種類がないという点は是正され、きちんと零戦や九七艦攻という機体が登場します。
これにより、ようやく技術力の向上や機体毎の特長を考慮に入れた生産を行うことができるようになりました。
もちろん、機体毎にこなすことのできる攻撃方法も整備されました。
でも銀河は雷撃できません。なぜだ、お〜っ?!
また、艦艇については、艦型毎の性能差もやっと妥当なものになりましたし、艦名の命名も可能になりました。
一作目は沈没艦の名前を引継がなくてはならず、日本の慣習にないことを強いていましたから、プログラム的には小さいながらもゲーム上は重要な改良点でしょう。
但し、新造艦の全てをプレイヤーがコントロールできるかというと、そうではなく、史実にある新造艦は一作目と同様、望まなくても自動的に竣工してきます。これらの艦艇は資材や資金を食わずに勝手に完成するので、大変好都合・・・いやいや、戦略級シミュレーションゲームとしてはかなりのマイナス要因です。


次に改悪点。
うざったいあの陸軍との交渉は「提督の決断シリーズ」の特徴なので文句をつけないこととして、問題にすべきなのは戦闘シーンが悪化したことでしょう。
一作目の戦闘シーンは初期光栄お得意のヘックス戦で、操作も単純明快、狭いながらも地形を良く捕らえていて極めて完成度の高いシステムだったのですが・・・
残念なことに、2の戦闘シーンは中期光栄の特徴である四角ヘックス戦に変更され、戦場マップも更に狭くなった上に画一化、おまけに動作が異様に重いという、憂鬱極まりないものに大後退してしまいました。
2での戦闘は、可能な限り航空攻撃に特化しましょう。
艦対艦戦闘、艦対地戦闘では、ユニットはあさっての方角に行こうとするわ、動きはのろのろしてるいるわで、まさに「怒髪天を突きましたわ!!」という状態です。
あの動作の重さは、まさにプレイヤーの堪忍袋の緒の耐久試験と言えるでしょう。
486‐66MHzであれでは、ひどすぎ。


評点
操作系 光栄の作品は、改版を重ねるごとに操作系が悪化する傾向がありますが、これも御多分に漏れず悪化してます。一作目の方がはるかに扱い易かった!
★★★
グラフィック マップ画面のグラフィックに大した変化はありません。
艦艇のグラフィックについては、一作目がモノトーンだったのに比べ、2ではカラー化されました。
しかし、全体的に粗雑な塗りとディテールは相変わらずで、成長はありません。
★★
音楽 一作目と比べて最大の後退です。
Nスペ地球大紀行などで有名な吉川洋一郎先生を起用していますが、美しい大自然の息吹と血生臭い戦争とは、あまりにも懸け離れていたようで・・・。
もっと燃える曲をつけて欲しかったですね。制作者サイドと作曲者との間の意識合わせが出来ていなかったのかも知れません。ウォーシミュレーションにつける曲ではないでしょう。
吉川先生の名誉のために付け加えておきますが、地球大紀行のBGMは間違いなく名作です。このBGMがCDのみの発売でLPが発売されなかったことが、私にCDプレーヤーを買わせたのですから。
オープニング 苦しいアニメーション(電脳紙芝居)をやっています。
しかし、センスがありません。何で大和が白昼堂々無傷の米正規空母を砲撃できるんだよーう。
何がなんでもアニメではなく、もっとセンスにこだわって欲しいですね。
一作目の方が、はるかに素晴らしい出来栄えでした。
資料価値 「太平洋海戦記」なる冊子が添付されています。
海軍的視点からの太平洋戦史解説と、両軍の代表的な艦艇・航空機を掲載しています。
戦史解説の部分では、大幅に誤記の量は減少しました。しかし兵器解説の部分で、数箇所に誤記が認められます。
資料としては、特別な価値はありません。
難易度 戦略・戦術レベルの難易度は一作目以上に低いです。
アメリカ軍はほとんど攻勢をかけてきません。コンピュータのルーチンがお話にならないほど弱すぎます。
この作品で一番てこずるのは、恐らく陸軍との方針・予算折衝でしょう。
とにかく陸軍はまったく言うことを聞いてくれません。大和の主砲で参謀本部を砲撃したくなるほどです。

ところで「提督の決断シリーズ」は、日本陸軍をどう考えているのでしょう。
海軍だけで戦争ができるわけはないのですから、予算折衝の敵役としての陸軍以外の姿を見せてくれないのでしょうか。
確かに、ミッドウェイ、ソロモン、マリアナといった決戦と呼ばれる戦闘は海戦であり、海軍が主力です。
しかし、フィリピン攻略もシンガポール攻略も陸軍の手によるものです。ガ島で米海兵隊と激突したのは陸軍です。硫黄島で米軍を恐怖のどん底に叩き落としたのも陸軍です。そしてミッドウェイ攻略の際も実際に上陸兵力として輸送船に乗っていたのは、海軍陸戦隊ではなく陸軍の一木支隊です。
本格的な陸上戦闘は、やはり陸軍の役目なのです。それすらも海軍の手のみで行おうとしているのですから、やや虫が好すぎる作りではないでしょうか。

こうしてはどうでしょう。会議で海軍の戦略が通った場合は、ミッドウェイのように陸軍から兵員を借り受けることができたり、反対に陸軍の戦略に同意した場合は実際に兵力を貸与したことにして、プレイヤーの使用可能戦力から一時的に抹消されるだとか。
こうすれば、もう少し会議の意味合いもあると思うんですが?

★★
総評 シミュレートのレベルはやや上がりましたが、それ以上にゲーム性が落ちました。より一層の努力が欲しいところです。
但し、他のゲームとの差異、光栄としての特徴はうまく出しています。
その代表である陸軍との会議モードは、個人的には面倒くさくて嫌ですが、あくまで人物を重視する光栄らしいところで、そのこだわりは大いに評価できます。
あとは、そのこだわりをどうやってゲームに反映するかでしょうね。
★★

「提督の決断2」「提督の決断2・パワーアップキット」は、株式会社 光栄の著作物です。


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