太平洋の嵐/太平洋の嵐DX


太平洋の嵐 太平洋の嵐DX
対応機種 PC-9801 E/F/M/VF/VM/VX/UV/UX
PC-8801 VA
PC-9801 F/M/VF/VM/VX/UV/UX
PC-8801 VA
価格 12800円 12800円
発売年度 1987年 1988年
備考 HDD非対応 HDD非対応


紹介
GAMの作品です。
太平洋戦争の全期間を扱った戦略級シミュレーションゲームです。
プレイヤーは、日本軍を受け持ち、有利な条件で連合軍と講和を結ぶことを目的とします。
1987年に発売された太平洋の嵐(以下、「無印嵐」と略す)と、操作性の改善やバランスの改正などが行われた改良版の太平洋の嵐DX(以下、「DX嵐」と略す)とがあります。
ちなみに両方とも非MS−DOSです。


内容説明
日本初の本格的コンピュータ戦略級シミュレーションゲームでしょう。
艦艇は一艦単位、航空機は一機単位で運用するという、当時としては驚異的なゲームでした。
バランスも高いレベルでとれており、PC98初期の大傑作です。
しかし、とにかくきついゲームです。
これほどプレーヤーに忍耐とリセットを強要するゲームはないでしょう。なぜなら・・・。


その一。忍耐、忍耐、大忍耐。(C)アイリス(^^;

戦略級ゲームである以上、生産や補給という行動を抜きにすることはできません。
しかし、このゲームでは、空母や航空機を生産するのは当然として、その空母や航空機の原料となる鉄やアルミまでも、鉄鉱石やボーキサイトから生産しなくてはならないのです。
そして、日本はその手の鉱業生産物が非常に乏しいので、船で運んで来なくてはなりません。中国大陸や東南アジアに散らばる鉱業生産地に、潜水艦を避けながら輸送船を送らなければならないのです。
この作業が神経をすり減らすことすり減らすこと!

船団規模と寄港先の港湾規模、重油消費量、還送資源から生産可能な資材などを計算して運用しなくてはいけませんし、潜水艦や天候などのイレギュラーにも対応しなければなりません。
それに資源の生産地は東南アジアを中心に各地に点在していて、管理すべき航路は一つや二つでは済みません。
少なくとも3船団300隻以上の輸送船が、絶えず東シナ海を往来していなければならない計算になります。

しかもこれだけの作業を滞りなく行ったとしても、得られるものは戦力の維持。連合軍の戦力には何の影響もありません。
さりとて、この作業をなおざりにしてしまうと、彼我の戦力差の拡大速度に一層の拍車がかかるだけなのです。
あな恐ろしや、補給戦。プレーヤーにとってはほとんど神経戦と化すはずです。


その二。ミラクル少女リセットちゃん。(C)コンプティーク(^^;;

開戦冒頭、真珠湾に迫る南雲機動部隊。その世界の海戦史に残る真珠湾空襲は、実は天候が悪いと実行できなかったりします。
海が時化ていたり雨だったりすると、6隻の空母からは1機の航空機も発艦する事ができず、真珠湾在泊のアメリカ太平洋艦隊を攻撃できません。
それどころか、米軍に発見されてあっさりと殲滅され、開戦3日間で日本海軍は対米戦闘能力のほぼ全てを喪失するという恐ろしい結末を迎えることがあるのです。
そうなると必然的に、ミラクル少女リセットちゃん(古い上にマイナーですな・・・)の登場です。

その他にも彼女の登場の機会は数知れず。
絶対に晴れない北太平洋の霧、輸送船の燃料を脅かす東シナ海の停滞性台風、航空機の行動を完全に封じ込める熱帯の豪雨。もう障害だらけです。うまくいっていた攻略作戦、軌道に乗っていた輸送作戦、すべてを一ブロックの天候がぶち壊してくれます。
逆に米軍の東京奇襲上陸作戦を防いでもらった覚えもあるのですが。
大抵の場合は・・・天候の気まぐれには、本当に泣かされます。


評点
操作系 無印嵐は、もちろんマウスなんかには対応していません。キーボードでの操作も、かなり検討の余地だらけでした。
しかしDX嵐では、まずマウスに対応、キーボード操作性もかなり改善され、プレイ時間の大幅な短縮化に成功しています。
グラフィック もちろん線画、無着色。時期からいって当然といえば当然なのですが。
しかし、航空機107機種、艦船178種のグラフィックを完備したという点は、驚きの境地でした。
特に、日本軍艦艇の艦型には開戦時の姿と対空火力強化型など改装姿の二種類が用意されていることには、ただただ感動するばかりです。
グラフィックの点では、無印嵐とDX嵐の間に特に相違点はありません。
★★★★
音楽 音楽はありません。
この時代にそれを求める方が酷でしょう。
これだけの本格的シミュレーションゲームをわずか384KBのメモリで動かしていたのですから、無理難題を押し付けてはいけません。
DX嵐では640KBのメモリを必要とするようになりましたが、音楽はつきませんでした。
もっともこのゲームの場合、BGMの必要性自体感じられませんが。
評定不能
オープニング 無印嵐は西太平洋の地図をバックに題字という構図でした。DX嵐は大鳳の取込みCGに題字でした。
但し無印嵐では、ドットで表現した炎が画面下半分を舐めていくということをしていたので、当時のマシンの処理速度とあいまって、かなりいらいらさせられました。
ちなみに無印嵐の題字は、あの源田実・元参議院議員の手によるものです。
★★★★
資料価値 付属のマニュアル「戦略要務令」はその分厚さで群を抜いています。無印嵐で129ページ、DX嵐ではなんと273ページ(!!)でした。
無印嵐のマニュアルは操作の説明にページのほとんどを割いていましたが、DX嵐では巻末に個々の兵器の図と要目が掲載されています。
更に驚かされるのが、ゲーム製作に当たって参考にした資料の山。デザイナーの情熱が伝わって来ます。
ゲーム中に参照できる性能要目は、個々は詳細ではないものの、全体からすれば膨大な量に上り、しかも数値だけでなく一口コメントが掲載されているのは非常に良心的です。
資料集としても通用する出来です。誉め過ぎでしょうか?
★★★★★
難易度 難易度は五つ星でも足りないくらいです。
素人さんは絶対に手を触れない方がいいです。玄人さんでも、始める時は相当の覚悟が必要です。
敵は怠惰です。
緻密に計算してゲームを進めないと、すぐに破綻を来します。
最後に、最も重要な要素、
★★★★★
総評 開発時期を考えると、とんでもない化け物ソフトです。
パイロット一人までシミュレートするなんて、考えも及びませんでした。
我こそはという人は、一度やってみる価値はあると思います。
★★★★★

「太平洋の嵐」「太平洋の嵐DX」「太平洋の嵐DX・パワーアップキット」は、GAMの著作物です。


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